「一楽、二萩、三唐津」
というフレーズを聴いたことはありますか?
これは、茶碗の格付けを表す順と言われています。
その中で一番に挙げられるのが「楽茶碗」です。
その楽茶碗の作者である歴代の楽吉左衛門と、
その覚え方をご紹介します。
楽茶碗とは?
楽茶碗は、利休の侘茶の精神をくみ取って、
楽家の長次郎が創り出した赤と黒の茶碗から始まります。
楽茶碗の特徴は、手づくね成形と
内窯焼成という制作技法にあります。
手づくね成形とは、轆轤を使わず、
土を手でこねて形を作り、
箆で削って姿を整える作り方です。
箆で削った跡が、それぞれの
楽茶碗の特長となり、見所となります。
内窯焼成とは、家屋内に作られた
小規模な釜で焼成することです。
一般的に陶器は、山間部の傾斜地に
大規模な窯を築き一度に大量に焼成しますが、
楽茶碗は、街中の家の中の小規模な窯で生産されます。
「楽茶碗」とは、長次郎に始まる
代々の楽家が制作したものを指しますが、
現在では、楽家以外の作品でも、同様の製法で作られた
陶器も「楽焼」と呼ばれています。
楽茶碗の作者 「楽吉左衛門」
楽吉左衞門は、長次郎から代々続く
茶碗師の家楽家の当主が襲名する名前です。
隠居の後には、「入」の字のつく入道号という名前が贈られます。
楽家では、長次郎以来の制作技法を継承しながら、
さらに各代で改良を重ねて、
楽茶碗を制作し続け、現在は15代に至っています。
個性が表れる各代の楽茶碗
初代長次郎
利休の創意を受け、誇張や装飾を抑制した
赤と黒の「無作為」の楽茶碗を創出しました。
黒楽茶碗では、光沢のないカセた釉薬が特長です。
2代常慶
長次郎の「無作為」を受け継ぐ一方、
織部茶碗のような沓形に歪んだ
楽茶碗も制作しました。
3代道入(ノンコウ)
光沢のある釉薬が特徴。
幕が垂れたような「幕釉」など、
様々な釉薬を使い新たな表現を
生み出しました。
4代一入
黒釉の中に赤色が浮かびあがるように
発色する「朱釉」が特長です。
具象的な絵を描いた茶碗も残しています。
5代宗入
小ぶりで端正な形にカセ釉と
長次郎の茶碗への回帰の傾向が見られます。
6代左入
光悦や瀬戸黒を模作するなど、
様々なタイプの茶碗を制作しました。
白濁した不透明の釉薬の赤楽茶碗が特長的です。
7代長入
大振りで豊かな作風が特長です。
8代得入
30歳で逝去したため、作品があまり残されていません。
9代了入
箆による造形を追求し、大胆な箆削りが特長です。
10代旦入
多彩で軽妙な箆使いが特長。
美濃、唐津、高麗などの作風も取り入れた
新たな造形を生み出しました。
11代慶入
明治維新で茶道が一時衰退した中、
懐石道具など幅広い分野の作品を制作しました。
12代弘入
素朴な人柄を表す穏やかな作風です。
13代惺入
太平洋戦争へ突入する厳しい時代、
楽茶碗の伝統的な様式を守り続けました。
14代覚入
戦後、楽家を復興。彫刻を学び、
造形力に富んだモダンな作風を確立しました。
当代 吉左衛門
伝統的な楽茶碗の領域を超えて、
赤・緑などの色彩豊かな創造的な作風が特長的です。
当代の楽茶碗には、「これでお茶が飲めるの?」
と思うような前衛的なデザインの茶碗もあります。
彼自身が「飲みやすさの為に茶碗を作っているわけではない」
と述べている記事も見られ、現代の陶芸作家として
自己の思いを込めた茶碗は、私の憧れです。
代々の覚え方
茶道を勉強するのであれば、楽家の代々の名前は、
さっと口に出るようにしたいものです。
そこで、私が、道具コレクターの祖父から教わった、
「いろは歌」的な、楽家代々の覚え方をご紹介しましょう。
4代一入からになりますが、
それぞれの最初の一文字を取ると、
以下の文章が出来上がります。
「磯幸鳥 竹越せか」 (いそさちとり たけこせか)
こうすれば、簡単に覚えられませんか?
代々の茶碗の比較ができる楽美術館
楽代々の茶碗をじっくり比較して鑑賞したいと思いついたら、
京都にある楽美術館へ出かけることをお勧めします。
楽美術館は楽家に隣接して作られた美術館で、
楽家代々が製作した茶碗が展示されています。
一通りを眺めてみると、それぞれの作風の違いが良く分かり、
きっと、自分の好みの楽茶碗も見つかると思いますよ!
私は、やはり当代の楽茶碗が一番のお気に入りです。
コメント