茶杓(ちゃしゃく)とは、
茶器や茶入れに入っている抹茶をすくうための道具です。
お薄の場合は茶器と茶杓を、お濃茶の場合は三器拝見で
茶入・仕服・茶杓を拝見に出します。
茶杓の銘には、茶杓を削った人の感性や、その人自身を表すといわれ、
拝見する客は作者の持ち味を感じ取るようにします。
茶杓には、それぞれの茶杓を収める筒が付いており、
この筒に墨書きされた『銘』が書かれています。
その昔、千利休以前の茶杓は、一回限りの消耗品として使われることが多く、
今日のように保存することはありませんでした。
千利休が豊臣秀吉に自害(切腹)を命じられた際、
死ぬ間際に削った茶杓に『泪(なみだ)』という銘を付け、
最後の茶会で使用したのは有名な話です。
茶杓について
茶杓は、竹で削られたものの他に、象牙・木製・べっ甲製のものなどがあります。
一般的に多く使われているのは、竹茶杓になります。
茶杓の説明
⇒お茶をすくう部分を『櫂先(かいさき)』
⇒節から櫂先に向かう筋を『樋(ひ)』
⇒櫂先と反対側の端を『切止(きりどめ)』と呼びます。
※茶杓を拝見する際は、節から先の部分は触れないように気を付けます。
茶杓の銘について
先に少し触れた様に、茶杓を収める竹の筒には、
作者の署名そして銘が書かれています。
そして、その筒は三つに分けられます。
共筒(ともづつ)
茶杓と同一人の作
追筒(おいづつ)/極筒(きわめづつ)
茶杓が単体で受け継がれ、
後世の人により筒が作られ、作者名を記入したもの。
替筒(かえづつ)
共筒が傷まないよう、替えを目的に作られたもの。
銘の由来は、季節・景色・名所・物語・歳時の名・歌/句、
または、制作年月・制作場所・贈り主を銘としたものなどが挙げられます。
一般的に薄茶の場合、季節を表す季語を銘として付けることが多く、
濃茶の場合は、和歌銘・禅語銘・風流銘などを付けます。
尚、お稽古の場では、亭主をする方が、
そのときにふさわしいと思う銘を付けることが多いです。
濃茶で使われる銘
銘の数は、数多くあります。
ここでは、濃茶で使われる銘の一部を紹介します。
一年を通して使われる銘
・無一物(むいちもつ)・知足(ちそく)・静寂(せいじゃく)・無(む) ・和(わ)
・独楽(こま)・徒然(つれづれ) ・若人(わこうど)・閑居(かんきょ)
・清閑(せいかん)・古今(ここん)・宝珠(ほうじゅ)・佳日(かじつ)
・無事(ぶじ) ・二人静(ふたりしずか) ・果報者(かほうもの)・平安(へいあん)
・洗心(せんしん)・初心(しょしん) ・万古(ばんこ)・常盤(ときわ)
・誰ヶ袖(たがそで)・山里(やまざと) ・高台寺(こうだいじ)・清風(せいふう)
・颯々(さつさつ)・手習(てならい) ・好事(こうじ)・白雲(はくうん)
・如意(にょい)・心の友(こころのとも)など。
おめでたい席で使われる銘
・吉祥(きっしょう) ・和敬(わけい) ・瑞雲(ずいうん)・慶雲(けいうん)
・相生(あいおい)・福寿(ふくじゅ)・好日(こうじつ)・吉祥(きっしょう)
・白鶴(はくつる)・千代の栄(ちよのさかえ)・老松(おいまつ)・寿老(じゅろう)
・千歳(ちとせ) ・青海波(せいかいは)・寿(ことぶき)など。
茶杓は、茶道具において、非常に重要視されている道具の一つです。
そして、茶道具の中で、唯一自分でも気軽に作ることが出来る道具でもあります。
茶杓は、抹茶をすくうだけの道具ではなく、
観ることを楽しむことも出来るのが魅力の一つです。
それは、茶杓そして銘には作者の思い入れや、人柄が出ると言われ、
拝見する際にはそれらのことを感じ取るよう意識してみましょう。
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