茶室で見かける、二つ折りの屏風。
これを『風炉先(ふろさき)』、
又は『風炉先屏風(ふろさきびょうぶ)』と呼びます。
この風炉先屏風、ただの飾りの様に思われるかもしれませんが、
ちゃんとした役目や意味がありますので、そのことをこれからお話したいと思います。
風炉先屏風…それぞれの言葉の意味
まずは、「風炉先屏風」という言葉を細かく見ていきましょう。
風炉
お茶を点てる湯を沸かすための道具。
夏用の風炉と、冬用の炉があります。
風炉先
字の通り、風炉の先(向こう側)
屏風
室内に置く道具で、風をよけるためや、
仕切りのため、又は装飾の目的で用いる物。
風炉先というだけあって、
実際に風炉の先に設置されます。
風炉先屏風は、茶室に飾られた道具を
引き立てる役割を持っているのと同時に、
道具を保護する目的でも使用されます。
風炉先屏風の寸法について
風炉先屏風の寸法は『利休形』を基本とした、
高さ2尺4寸(約73㎝)、横3尺5分(約92㎝)
縁5分(1.5㎝)四方の真塗で、鳥の子の白張り。
流派や好みによって寸法は若干違ってきますが、
現在最も多く使われているのは、
元伯宗旦好みの、1尺8寸(約54㎝)になります。
どうやって使うもの?
風炉先屏風は道具畳の向こう側に置きます。
※道具畳
茶室で道具を置き、点前をする畳のことを言う。
点前畳、又は亭主畳とも呼ばれます。
広間(4畳半以上の茶室)で、
点前座(亭主が点前をするために座る場所)が
襖や障子と隣接している場合に、風炉先屏風を設置します。
逆に、小間(4畳半以下の茶室)で、
点前座が壁などで囲まれている場合や、
風炉先窓がある茶室の場合は使用しません。
※風炉先窓
点前座の前方にある窓のことで、
本来小さく薄暗い茶室で、亭主が点前をする際に、
手元に明かりを取り込むためのもの。
似ているけど、違う『結界』
結界とは、本来仏教用語です。
寺院などでは、内陣(ないじん)・外陣(げじん・がいじん)
(寺院を2つに区分した言い方)をはっきりと分けるため、
又は僧侶の席の境に木柵を使用して『結界』を設けています。
その習慣は、茶の湯の世界でも取り入れられ、
風炉先屏風の代用品として、道具畳と客畳を仕切るために使われます。
また、広間の道具畳の向こう側に置き、広間を小間に区切るためにも使われます。
風炉先屏風の種類
一般的に、風炉用と炉用で、
風炉先屏風の区別はありませんが、
やはり時期によって使われものに好みがあります。
風炉用
夏は涼しさを感じさせるよう、
腰板(板の部分)に透かし彫りを施したものが多く使われます。
炉用
冬は風を通さない、
全体を紙・絹・色紙張りしたものが多く使われます。
近年では、両面使い(リバーシブル)になっているものもあります。
ここまで説明してきたように、
一見ただの飾りのような風炉先屏風ですが、
実際は風炉先屏風を置くことによって、
茶室を引き締めると同時に茶室を彩り、
道具を引き立てる重要な役目を持っています。
点前や作法と同じ様に、
使われる風炉先屏風は、流派によって
若干違いがありますが、本来の目的は一緒です。
風炉先屏風も、作り手の技術がやはり光るものです。
そして時期や、道具の取り合わせによって変わる
風炉先屏風は、それ一つで茶室の雰囲気を
ガラリと変えてしまうほどです。
お稽古や茶会へ足を運んだ際には、
茶室の影の立役者である
風炉先屏風にも目をやってみて下さい。
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