今日は、箱書きの見方についてお話したいと思います。
お茶道具の目利きで最初にポイントになるのは、箱です。
意外と思われるかもしれませんが、
商品より箱の状態を見ることで、中の商品がどういったものなのか?
ということが、ある程度把握できます。
今回の記事では、その方法についてわかりやすく解説しますので、
参考にしてくださいね。ではいきましょう。
箱の種類
箱書きには大きく分けて3種類あり、
「書付箱」と「極め箱」、「共箱」があります。
・書付箱・・・お家元や高僧など権威のある人物が作品の品名を書いた箱です。
・極め箱・・・極め書きがされた箱です。
その筋のプロ・目利き(楽茶碗であれば当代の楽吉左衛門)が、
鑑定をし間違いないという事で書かれたものが極め箱です。
・共箱・・・作品の作者が商品の内容を記した箱です。
今回は3つの中でも「共箱」についてお話ししたいと思います。
共箱のパターン
共箱には商品の名称と作者の署名が書かれています。
共箱の書き方のパターンはいくつかありますが大きく分けて4つです。
・蓋の甲に「商品名」と「作者名」の両方が書かれているパターン
・蓋の甲には「商品名」で、蓋の裏に「作者名」のパターン
・蓋の甲には「商品名」で「作者名は」箱の身の底に書かれているパターン
・箱の側面に「商品名」と「作者名」が書かれているパターン
ざっくり言うと、この4つがほとんどです。
では続いてこの4つのパターンを写真と一緒に解説していきますね。
蓋の甲に「商品名」と「作者名」が書かれているパターン
こちらの共箱の場合は、「商品名」と「作者名」が、
同じ蓋の甲に書かれています。
右上から「平茶碗」、左下に「焼物師 啄元 印」とあります。
作者は「焼物師の啄元」が作ったもので、「平茶碗」ということがわかります。
こちらもそうです。
右上から、商品名
「南紀男山土 御茶碗 黒筒」
左下に作者名
「〇御庭 印 吉左衛門 造之」
になっています。
ですので、
「黒筒茶碗 南紀男山の土を使って」という作品で、
「吉左衛門造 」の作品ということがわかります。
(さらに印と書体から旦入という事がわかります。)
蓋の甲には「商品名」で、蓋の裏に「作者名」のパターン
こちらは蓋の甲に「赤茶碗」とあり、
蓋の裏に「辛丑春 楽 吉左衛門 印 造」とあります。
「楽 吉左衛門造の赤茶碗」という事がわかります。
しかも、年号が入っているので制作年数も判ります。
(印や書体から、弘入ということもわかります。)
こちらだと、
箱の甲に「鳥の子写 酒盃」と、
蓋裏に「印 善五郎造」とあります。
「善五郎造 鳥の子写 酒盃」ということがわかります。
蓋の甲には「商品名」で「作者名は」箱の身の底に書かれているパターン
商品の名称を蓋の甲に。
作者名を箱の身の底に書いている場合はどうでしょう?
右側が蓋の甲で「乾山写 やぶこうじ 茶碗」と書かれています。
左側が、箱の身の底で、「印 善五郎造」とあります。
ここから、「善五郎造 乾山写やぶこうじ茶碗」ということがわかります。
(印と書体から永楽即全の作品ということがわかります)
箱の側面に「商品名」と「作者名」が書かれているパターン
右上から「瓢の絵 茶碗」、左下は、「楽吉左衛門造」となっています。
楽吉左衛門造の瓢の絵 茶碗ということが読み取れますね。
(こちらは先ほどと同じく弘入の共箱です。筆跡など見比べてみてください)
右上から「御所丸写 茶碗」、左下は「紀州焼葵窯 二代栖豊造」となっています。
最後にまとめみます
この記事では共箱のパターンについてお話してきましたが、
これらのパターンを知ることで、
一見、「何書いてんだ???」
という状態に陥っても、
パターンを思い出して、「ここは蓋の甲だから商品名だな」、
などどあたりを付けて読むことで、解読できる幅が広がります。
もちろん基本的な情報(人の名前や印のカタチなど)は、
知識として持っておく必要はありますが、
それだけでは判断出来ないことが多いのも確かです。
むしろ印のカタチ等はいくらでも模造できるので、それだけに頼るのは危険です。
パターン、決まり、クセを知ることで、目利きの幅が広がると思います。
目利きまでの道のりはそう簡単ではないですが、
少しづつでも道具に触れることで着実に情報は蓄積されます。
他にも目利きに関する記事を書いていきますので、参考にしてください。
ありがとうございました。
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