「家にはお茶室があるのよ」と言われると、
「特別な空間があるのだな~」と想像しますよね。
茶室には、一般的な和室と違った、独特の建築様式があります。
お茶室に用いられる建築様式はどんなものがあるでしょう?
入口は躙口
初心者の方でも、「お茶室は、とても小さい入口から入るのですよね!」と
ピンときますね。
茶室の一番の特長は、「躙口」と言ってもよいでしょう。
躙口の高さは2尺2寸(約67㎝)、幅は二尺(約61㎝)が基準で、
客は腰を屈めて潜って通ります。躙口には、日常とに非日常の境界という意味と、
身分の差なく誰もが頭を下げざるをえないようにさせるという
機能を持っているのです。
そのため、貴い人に立ち姿のまま入って頂けるよう、
別に「貴人口」を持つ茶室もあります。
細部までこだわる床の間
躙口を潜って茶室に入り、まず目に付くのは床の間です。
床にも、壁を塗りこめた「室床」、
床の脇に明り取りの「墨跡窓」を開けた床など、
様々な種類のものがあります。
「床柱」は、施主が一番こだわる部分です。
柾目の木材、丸太のままの自然木、奇木と言われるもの・・など
好みが表れます。床を拝見する時は、飾られた軸や花だけでなく、
柱、壁の塗り方などの細部もよく鑑賞しましょう。
天井は「真・行・草」
茶室の天井は多様な素材が使われており、
小さなスペース内に「真・行・草」と格を付けています。
例えば、客座の上の天井は、「真」として、
板を張り水平にした「平天井」に。
点前座の上は、一段下げた「落天井」にや、
葦を蓆編みにして張った「簾天井」にして「行」。
「草」は屋根裏が向き出しの「掛込天井」と言うように、
変化を付けています。
亭主と客を切り分ける工夫
客と点前座を明確に分離し、より亭主の点前を引き立たせるという効果を狙い、
折れ曲がった皮付きの丸太の「中柱」を
点前座の横に立てて「袖壁」を付けた茶室もあります。
「袖壁」の裏側には、道具を飾る「釣棚」が付けられています。
また、点前座には、通常の畳を4分の3に切りつけたサイズの
「台目畳」を使う場合もあります。
これは、点前には不要な余白の部分を切り取って、
客の目がより点前に向くようにしたものです。
開放できない茶室の窓
窓は、一般的には開閉ができ、外部の眺望を楽しむ機能がありますが、
茶室の窓は完全には開かないものがほとんどです。
茶室が求める窓の機能は、壁面の一部として、
壁面のデザインを高めることと、
障子を通した柔らかい光を採ることだからです。
茶室独特の窓の建築様式として、「下地窓」「連子窓」が
挙げられます。
いずれも室内側には障子が貼ってありますが、
外側は葦や竹を縦横、あるいは縦並びに組み込んで、
あえて光を間接的に取り入れるようにした窓です。
また、掛込天井には「突上窓」が開くものもあり、
天井からの採光とともに、夜にそこから月を眺める趣向にも使われます。
「どんな茶の湯をしたいのか」で決まる茶室の構成
これらが代表的な茶室の建築様式ですが、
これがあれば茶室になるというものではありません。
それぞれの様式は、「どんな茶の湯をしたいのか」ということから
始まっているのです。
利休は、精神性を重視するとともに、道具の鑑賞にも力を入れました。
その為、全体は仄暗くし、床の間の飾りが浮かび上がるような
茶室を作りました。
織部は、亭主の点前に注目が集まるよう、窓を増やし、
亭主に光が当たるよう点前座の周囲に多く配置する茶室を作りました。
それぞれの茶室の建築様式を見れば、
庵主がどんな茶の湯を志向しているかが、自ずとわかるのです。
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