大寄せの茶会で、他の流派のお点前を拝見すると、
意外と違いが多いことに驚きますね。
大名茶人で優れた美意識を持っていた小堀遠州を祖とする遠州流は、
点前の作法が、武家らしく厳かで、しかも華やかさもあります。
遠州流の作法の特長はどんなものでしょうか?
「総合芸術家」小堀遠州
小堀遠州は、若い頃から古田織部のもとで茶道を学び、
織部亡き後は、茶道指南役として、大名、公家などを弟子に持ち
指導を行っています。
茶人として生涯で400回ほどの茶会を催し、
茶入、茶碗、花入などを多く作製し、道具の選定も行いました。
遠州は、茶道に限らず、様々な分野においてその審美眼を発揮しました。
特に、建築、造園の腕は高く評価されています。
遠州の目指した綺麗さび
質素で内省的な「わび茶」を追求した利休、
武家として力強く大胆な茶道を志した織部に対し、
遠州の茶道は、武家の茶道に自然な優雅さを取り入れた「綺麗さび」
と呼ばれる茶風でした。
遠州が作りあげた、遠州流の点前と、
私が稽古している表千家ものと比べてみましょう。
表千家では、基本的に「流れるような」点前が美しいと言われます。
遠州流の点前を拝見すると、武家らしいメリハリのある動きの中に、
さらに、客の目を惹き付けるような優雅な見せ場が加わっているように
感じられます。
袱紗は右に
遠州流では、袱紗は右腰につけます。
千家流では、左腰につけますね。
以前、武家の茶道では左腰は刀を指す重要な場所なので、
反対側の右側に袱紗を付けるのだと聴いたことがあります。
今回、遠州流のホームページを拝見したところ、
「袱紗は右手で扱うので、普通は右に付けるのだが、
宗旦が左ききで左腰につけたので、宗旦の末裔である千家流では、
それを引き継いでいる」
という内容の記載がありました。
どちらも一理ありますね。
こき袱紗とたたみ袱紗
表千家では、袱紗のさばき方は1種類ですが、
遠州流は「こき袱紗」と「たたみ袱紗」の2種類あるそうです。
「こき袱紗」は、袱紗の両端を持って縦向きに持ったのち、
右手で袱紗を扱くようにしながら畳みます。
丁度、茹でたホウレンソウを絞るような手の動きです。
茶器を清める前は、こき袱紗をします。
「たたみ袱紗」は、表千家と同じように袱紗を折りたたみます。
茶杓を清める前は、たたみ袱紗になります。
茶巾の美しいたたみ方
表千家では、茶巾を、仕組む際、ほぼ正方形になるようにたたみます。
遠州流では、茶巾を対角線上に斜めに折り込み、
耳が両端から出るような形でたたむようです。
裏千家では、一部のお点前でこのような茶巾のたたみ方があるそうですが、
見た目も麗しい素敵なたたみ方だと感じました。
印象的な「空手水」
遠州流のお点前の中でも、特に印象に残るのは
「空手水(からちょうず)」ではないでしょうか。
お茶を茶碗にはく前に、何やら、お坊さんが呪文を唱える際にするように
両手の指を動かします。
これが、空手水です。
手の指が親指から順番に「空風火水地」とあてはめられている中で、
水の薬指をこすりあわせて、
手を洗っているようなしぐさをすることで、
水を呼び起こして清めるという意味があるそうです。
お茶を点てる前に、清潔にするという意味なのです。
点前は美味しいお茶を点てる為
この他にも、柄杓の扱い方、茶杓の清め方、客の扇子の扱い方など、
遠州流の特徴のある点前がありますが、
お茶を入れて、お茶を点て、その後しまうという、
茶道の大きな流れに違いはありません。
流派による点前は「どうでもよいところが違う」というお話が
あります。
どの流派の点前でも、「美味しいお茶で客をもてなす」
という目的に違いはないのです。
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