茶道具の中で、色・模様・素材のバリエーション豊富で、持ち主の個性が
一番現れるのは、仕覆ではないでしょうか。
「これは●●緞子ですね。渋い色合いで、いいご趣味ですね・・。」など、
仕覆の拝見時に気の利いた一言が言えれば、相当の茶人と呼ばれるでしょう!
有名な仕覆の模様とともに、裂地の種類を一緒に学びましょう。
金襴(きんらん)
金襴は、平金糸(金箔糸)で模様を織り出した織物です。
宋・明から渡来した織物で、室町時代に盛んに使われ、
東山御物の掛物表具に多く用いられています。
その後、17世紀初頭には、堺や西陣で織り出されるようになりました。
金を使い華やかな為、茶道では、茶入れの仕覆に好んで使われます。
柄は細かいものが好まれるようです。
蔦や牡丹など植物の模様や、兎などの動物の模様のものなど、
金糸で多種多様な模様が織り出されています。
遠州は好んで使い、中興名物「畠山肩衝」に、
輪違紋を織り出した「畠山金襴」、
日蓮上人筆の曼荼羅の表具を本歌とする「畠山裂」など
4種の金襴の仕覆を添えました。
緞子(どんす)
繻子織地で、経糸と緯糸にそれぞれ色の違う練り糸を使って、
地と模様を織り出した織物を緞子と呼びます。
厚地で光沢があり、どっしりとしており、
金襴と並んで高級織物の代名詞となっています。
緞子を茶入れの仕覆に初めて用いたのは珠光といわれており、
「珠光緞子」は根津美術館が所蔵する大名物「松屋肩衝」に沿う仕覆として有名です。
織部、遠州も緞子の仕覆を好んで用いていますが、
特に遠州は色の異なる正方形が並ぶ「石畳緞子」を好み、
様々なバリエーションが伝わっています。
間道(かんどう)
間道は縞模様のことで、東南アジアや中国南部で織られたものが、
鎌倉時代以降日本に伝わってきました。
日本でも、桃山時代以降は木綿の間道が織り始められました。
間道の範囲に入るものに、縦縞、横縞の他に、格子縞、千鳥格子などがあります。
間道を茶入れの仕覆に初めて用いたのは武野紹鴎です。
松屋久政の茶会記に紹鴎の茶会で「円座肩衝茶入」を
間道の仕覆に入れたという記録が残っています。
紺地に細かい白の千鳥格子の模様の「紹鴎間道」は、
大名物「紹鴎茄子」に沿う仕覆に用いられています。
「利休間道」は、紹鴎間道より織の荒い千鳥格子で 「松屋肩衝」に沿う仕覆の一つとして知られています。
紹紦(しょうは)
紹紦は明代末期の紋織物で、種々の色の経緯糸を使って
綾織風に文様を織り出したものです。
柔軟でしわが付きにくいことから、古来より大切な道具を包む裂として、
重宝されてきました。
利休の弟子で、連歌師として活躍した里村紹巴は、
書画や茶道具を包む為に
数々の織物を使用していました。
これらの裂のコレクションが「紹紦」と呼ばれたことが
名前の由来だと言われています。
多様な模様が織り出されるのが特長で、
「富貴長命」の文字を織り出したものなどがあります。
錦(にしき)
錦といえば、鮮やかで美しいも指す言葉として用いられますね。
錦には木綿と絹があり、二種以上の色糸で文様を織り出したものです。
経錦、緯錦、綴錦に分けられます。
錦の有名な模様は「有栖川錦」です。
名称の由来は、もと有栖川宮家に伝来したからと言われますが、
はっきりわかりません。
前田家に伝来した有栖川錦には雲竜紋、馬紋、鹿紋があります。
「いちご錦」も有栖川錦に似た厚保での錦で、
意匠かされた小花が規則正しく並ぶ模様です。
花の模様をイチゴに見立てて名付けられたようです。
紺地に梅の花と小鳥の模様の「清水裂」も錦の一つです。
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