先日は箱書きのカタチである「共箱」についてお話ししましたが、
今日は「極め箱」についてです。
極めとは、中身の作品を鑑定し、
間違いないものとして証明することを「極めをする」と言います。
この極めをその作品の箱に書けば、「極め箱」と言います。
では極め箱にはどのようなものがあるのでしょうか?
次に極め箱の種類についてお話しします。
極め箱の形式
基本的に極め書きは、
「蓋の裏」、「箱の身の側面」、「蓋の甲」、「底の身の底」にあります。
で、僕の経験からの個人的な印象だと、
蓋の裏>箱の身の側面>底の身の底>蓋の甲
の順番で、だいたい5:3:2:1の割合なイメージです。
(足して10にならないじゃないか!というツッコみは受け付けません。。)
で、この中で気を付けたいのは、「箱の身の底に入っている場合」です。
なぜかというと、このパターンは本来ありえないからです。
ふつうわざわざ見えない箱の身の底には書かないですよね。
はい、理由があるんです。
箱の身の底に入っている場合は、
1.「底に書かざるを得なかった」もしくは2.「後から入れ込んだ」の
二つの可能性が考えられます。
1.「底に書かざるを得なかった」パターン
こちらの写真が「底に書かざるを得なかった」パターンですが、どういう事かというと
すでに箱の蓋裏に箱書きがあった
ということです。
参考までに、こちらの作品の蓋裏には、即中斉の書付が添っていました。
つまり、惺入の赤茶碗が存在して、そこに即中斉宗匠が書付をし、
その後に惺入の子である覚入が極め箱を書いたという経緯が、箱を見るだけでわかります。
2.「後から入れ込んだ」パターン
こちらは先ほどのパターンと逆で、先に極め書きが蓋に書いてあって、
後に書付を書いてもらう場合に起こるパターンです。
これは意図的にことを仕立て直しているという意味ですが、これには理由があります。
基本的に、箱書には格があって、
書付>共箱>極め箱
の順番になっています。
なので、お家元の書付を書いてもらう場合は、蓋を新調して書付を頂くのが礼儀です。
で、その際に元々あった極め書きを処分するのはもったいないという事で、
箱の身の底に入れるという作業になるわけです。
作家別の極め箱紹介
今回取り上げるのは、楽家と永楽家を取り上げますが、
作家さんの極め箱のスタイルはほぼ共通しているので、
同じような考えかたで大丈夫です。
永楽家の極め箱
・永楽 得全
白磁 牡丹花
酒杯
家父和全作
(印)善五郎識
・永楽 正全
金海 茶碗
十一世保全作
〇紛無者也
(印)善五郎識
・十七代永楽善五郎
和全作
菊谷焼朝顔扇形
火入
(印)善五郎識
楽家の極め箱
・楽九代 了入
得入作
赤平茶碗
九代了入(印)
・楽十一代 慶入
長入作黒
手付小鉢
菊置上ケ アリ
十一代
慶入(印)證
・楽家15代 吉左衛門(当代)
楽家の当代は、箱の身の側面に書きます。
これはほぼ決まっていて9割は箱の側面に書かれます。
ちなみにこちらは比較的若い時の字と考えられます。
黒茶碗
一入造
十五代
吉左衛門(印)證
こちらは最近ですね。
というか当代は基本的に極め書きには極めをした年号を入れてくれます。
「辛卯」と入っているので2011年に極め書きをされたという事がわかります。
赤茶碗
中印共箱添
了入造
辛卯の歳
十五代
吉左衛門(印)證
まとめ
極め箱のパターンとしては、共箱の時と同じく、
「蓋の裏」、「箱の身の側面」、「蓋の甲」、「底の身の底」にあり、
その割合は、
蓋の裏>箱の身の側面>底の身の底>蓋の甲
の順番で、だいたい5:3:2:1の割合なイメージです。
前回の記事はこちら
→もう騙されない!箱書の書き方・種類について茶道具商が解説してみた。
次回は、書付についてお話してみたいと思います。
最後までありがとうございました。
コメント