初釜に使う主菓子と言えば?
初釜とは、正月を迎えたことを祝い、
一年で最初に釜をかけることを言います。
元来、年頭に頂くお茶には、厄除けや健康祈願の意味があり
『大福茶(おおぶくちゃ)』と呼ばれてきました。
初釜に使われる主菓子には、新年最初の行事にふさわしく、
新春を想わせる鮮やかな色合いと、
華やかさを持ち合わせたお菓子が使われます。
三千家で使われる代表的な主菓子
表千家
常盤(ときわ)饅頭
常盤饅頭は、
「千年変わらない松の翠」をモチーフにし、
白い薯蕷饅頭の皮の中に色鮮やかな緑の餡
(白餡を緑に染めたもの)を入れたものです。
薯蕷の白い皮は「雪」を、中の緑餡は「松」を想わせ、
雪化粧した松をイメージさせます。
裏千家
花びら餅
花びら餅は、
京都でお正月のおめでたい時期にのみ食べられるお菓子の一つで、
白味噌を餡に使用し、その餡を淡い桃色に染め、
甘く煮た牛蒡(ごぼう)と一緒に柔らかい求肥で包んだものです。
武者小路千家
都の春
京都の春を「緑と紅」で色分けし、
緑は「柳」・紅は「花」を表現しています。
きんとん仕上げのお菓子で、中は小豆餡です。
せっかくですので、ここで一年を通して、
どんなお茶菓子が茶の湯では使われるのか、
少しご紹介してみます。
1月から12月の和菓子をご紹介!
睦月(1月)
常盤饅頭・花びら餅・笑顔饅頭 / えくぼ饅頭
※『笑顔・えくぼ饅頭』は、
シンプルな薯蕷饅頭の中心に、
一点の紅を差したものです
如月(2月)
うぐいす餅・東風(こち)・下萌え・草餅
※『東風』は、和歌などに多く用いられた春の季語で、
“東の風は春を運んでくる…”という意味で、
この銘を付くお菓子は、梅をモチーフにしたものです。
※『下萌え』は、積もった雪の下から、
若芽が萌え出るのをイメージしたもので、
雪が降り積もった厳しい冬の中でも、
一歩一歩確実に春が近付いて来るとうことです。
弥生(3月)
わらび餅・引千切(ひちぎり)
※『引千切』は、餅を引きちぎってくぼみを作り、
そのくぼみ部分に餡などを乗せたもの。
卯月(4月)
桜餅・花見団子
皐月(5月)
青梅・柏餅・唐衣(からごろも)
※『唐衣』は、伊勢物語に登場する
和歌「かきつばた」を、
和菓子に盛り込んだものです。
水無月(6月)
若鮎・あわ雪・水無月・黄身しぐれ
文月(7月)
葛焼・水羊羹
葉月(8月)
琥珀(こはく)・玉すだれ・水饅頭
長月(9月)
鶉餅(うずらもち)・こぼれ萩・月見団子
※『こぼれ萩』とは、俳句の季語で、
晴れ渡った秋空の下、こぼれんばかりに咲き乱れた
萩の花の様子のことを言います。
神無月(10月)
栗しぐれ・亥(い)の子餅
霜月(11月)
くるみ餅・紅葉狩(もみじがり)
師走(12月)
雪餅・蕎麦薯蕷・栗蒸し羊羹
初釜で使われる主菓子、そして月ごとに口にする主菓子は、
どれもがその時期を最も表すデザインになっています。
日本は四季があり、その四季を主菓子を通して味わうことが出来ます。
旬の素材を使い、春には桜をデザインしたもの、
夏には涼しげな水をイメージしたもの、
秋には紅葉、冬には雪…などと言った様に、
小さい和菓子の中に、日本の壮大なる四季が繰り広げられている
と言っても過言ではありません。
特に、初釜はおめでたい席であり、
初釜でしか使われることのない道具もあり、
大体使われる主菓子は毎年決まっているものです。
一年に一度しか味わえない、特別な初釜で頂く主菓子は、
また格別と言って良いでしょう。
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